
・でも、どんなジャッキが良いの?
・車載工具のジャッキってどうなの?
・ジャッキのスペックってどうやって確認するの?
・とりあえず買ってみたけど使えないこともあるの?
上記のお悩みの方へ解説していきます。
とても重い車を持ち上げるための工具がジャッキです。
今回はジャッキについて、どんな種類があるのか、どんなことを確認して選ぶのかを解説します。
私は一級自動車整備士資格を保有しています。
今回は私の整備士としての知識や経験からタイヤ交換をするときに実用的なジャッキを、ご紹介していきます。
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ジャッキの種類
エンジンやトランスミッションなどの重い部品を持ち上げるため、ジャッキには様々な種類があります。
テーブルのような大きいジャッキや、バイク用のジャッキなど、用途によって大きさや構造が全然違います。
今回は様々なジャッキの中からタイヤ交換をするときに実用的なジャッキを、3種類ご紹介します。
参考
タイヤ交換のためにジャッキアップされる方が多いと思います。
作業後のホイールナットの締め付け確認は必ずトルクレンチを使用して行ってください。
パンタグラフジャッキ(車載ジャッキ)
スペアタイヤが装着されている車種には標準で搭載されていることが多いパンタグラフジャッキ。
早速ですが正直に言うと、私はこのジャッキを通常作業には基本的に使用しません。
あくまで緊急用の工具と位置付けています。
私が使用しない1番の理由は安全性に欠けるからです。
このジャッキの特徴や懸念点を見ていきましょう。
パンタグラフジャッキの特徴
- 構造がシンプル
- ねじを回転させて車両を持ち上げる(ねじ式)
- 軽量・コンパクト
- 販売価格が安い
- 車種やグレード次第では標準装備されている
パンタグラフジャッキの懸念点
- 幅が狭く横からの力に弱い
- 倒れやすいので安定性に欠ける
- 地面に多少でも凸凹があると倒れる原因になる
- 車両を持ち上げるとき、ある程度のねじを回す力が必要
- 1輪ずつしかジャッキアップ出来ない
上記のようにコンパクトで車内に搭載しても邪魔になりにくいコンパクトなジャッキながら、倒れやすいなどの安全面で心配な部分が多いことが挙げられます。
また、力がうまくかけられず、ねじを回せない女性もいらっしゃいます。
倒れやすいという点では、実際に私もパンタグラフジャッキでジャッキアップしているときに、車両に振動を与えてしまい今にも倒れそうになりヒヤリとした経験があります。
車載工具のパンタグラフジャッキは要らないの?
そんなことはありません。
出先でのパンクなど、緊急の場合には迷わず使用します。
もし他の種類のジャッキがある状況だったらパンタグラフジャッキは選びませんが、出先などの緊急時には即使用します。
特徴にもあるようにコンパクトなので、例えば車での旅行などの荷物の中に大掛かりなジャッキを載せなくても良いというメリットがあります。
コンパクトながら出先でのトラブルで、いざというときには最低限のジャッキアップは出来る工具です。
なので、基本的に作業では使用せず、緊急用として使用することが多いですね。
緊急事態なものの、慣れない作業でジャッキが倒れてしまう可能性がある場合には自分で作業せずプロであるJAFにロードサービスをお願いするという方法もあります。
もし利用する可能性が高い場合には、事前にJAFとの提携しておくことをおすすめします。
提携していなくても利用することは 可能ですが、割高な料金での作業となりますので会員になっていた方が安く済みますよ。
もしご自身の車に異常を感じた場合は多くのロードサービスを無料で対応してもらえるJAFに相談して近くの工場まで運んでもらう方法もあります。


油圧式パンタグラフジャッキ(シザースジャッキ)
パンタグラフジャッキに油圧機構が追加されたジャッキです。
パンタグラフジャッキと同じく、私はこのジャッキを基本的には使いません。
通常のパンタグラフジャッキよりは使いやすいタイプですが、私は後述するガレージジャッキ(フロアジャッキ)を通常の作業で使用します。
理由はパンタグラフジャッキと類似した特徴や懸念点があり、倒れる可能性があるからです。
油圧式パンタグラフジャッキの特徴
- レバーを上下させるだけで車両を持ち上げれる(油圧式)
- ねじ式に比べてスピーディにジャッキアップ出来る
- 軽量・コンパクト
- 販売価格が安い
- 女性でも簡単にジャッキアップできる
油圧式パンタグラフジャッキの懸念点
- 力の方向次第では横からの力に弱い
- 倒れやすいので安定性に欠ける
- 地面に多少でも凸凹があると倒れる原因になる
- 1輪ずつしかジャッキアップ出来ない
パンタグラフジャッキよりも油圧機構があるおかげで若干幅は広くなります。
とは言え、横方向の力に弱いのは同じなので一定の力が加わると倒れてしまう可能性があります。
使用するときは平坦なところで使用するなど、きちんと正しい使い方をすればタイヤ交換ぐらいは問題なく作業できます。
男性はもちろん女性でも比較的軽い力で操作できる点は大きいのですが、私は倒れてしまう可能性があるのでメインでは使用しません。
ガレージジャッキ(フロアジャッキ)
自信を持って一番オススメしたいジャッキです。
理由はスピーディかつ安全にジャッキアップ出来るところです。
油圧機構があるのは、シザースジャッキと同じですが、幅が大きく安定感のあるジャッキアップが可能です。
ガレージジャッキの特徴
- レバーを上下させるだけで車両を持ち上げれる(油圧式)
- ねじ式に比べてスピーディにジャッキアップ出来る
- 幅が大きく、ジャッキアップ時に安定感がある
- 前(もしくは後ろ)の左右2輪を同時にジャッキアップ出来る
- キャスターが付いていて移動が楽
- 女性でも簡単にジャッキアップできる
ガレージジャッキの懸念点
- パンタグラフやシザースジャッキに比べて大きくて重い
- 簡単に持ち運べない(大型のもの)
- サイズには大小2つのタイプがありますが、小型でも重いものが多いです。
小型であれば持ち運びができるのでイベントや出張整備に持っていきやすいですね!
大型はとても重く数十キロあるものもあります。
持ち運びは難しいのでガレージで使用するジャッキですね。
ジャッキを購入前に確認すること
自分の車の情報
ジャッキのスペックを正しく選ぶためには自分の車の情報を集めます。
車両重量
まず自分の車の車両重量を確認しておく必要があります。
後述するジャッキの耐荷重(持ち上げる能力)以内にする必要があるからです。
例えば車両が3tある場合、2tまでしか持ち上げられないジャッキでは能力不足なので使用できません。
購入してから使えない状況にならないためにも確認が必要です。
どうやって確認するの?
車検証の「車両重量」を確認する。
本当は人間でいうところの体重計のような機材に車両を載せて計測した方が確実です。
しかし、そんな機材が身近にある方は、ほぼいないですよね。
ディーラーでも設置している店舗はありませんし、作業でも使いません。
計測ができないので、車両重量以上の能力があるか判断するために必要になるので確認します。
ジャッキの最低地上高
どのジャッキも車両の下に潜り込ませて使用します。
つまり、車両の高さより分厚い(高い)ジャッキは車両の下へ入りません。
また、これから購入される方へご紹介したいのが、ローダウンジャッキという薄め(低め)のジャッキもあります。後述しますね。
車高を下げるチューニングをしていなければ、基本的に使えます。
カースロープが必要なのか気にしなくても大丈夫です。
ローダウンのチューニングをして、ジャッキが入らない場合には、タイヤをわざとスロープなどに乗り上げさせて最低地上高を高くする方法があります。
整備の現場では最低地上高がバラバラなお客様に対応する必要があるので、ジャッキが入らない場合にはスロープに乗せてジャッキアップしています。
もし私が今からジャッキを購入するのであれば、スロープなどにタイヤを乗りあげずに作業したいので、最低地上高は確認しておきます。
ジャッキの情報(スペック)
前述した自分の車の情報から、どういったところを見ていくのかを確認します。
ジャッキの耐荷重
耐荷重とは簡単に言うと「この耐荷重の重さ以下のものなら支えられます」を数値化したものです。
「この重さを持ち上げられます!」の数値ではないので注意ください。
どうやって選ぶの?
自分の車の車両重量以上の耐荷重のものを選ぶ「車両重量 < 耐荷重」の状態になるように選ぶ
実際に経験したダメな例をご紹介します。
ジャッキ耐荷重:2t
車種:エルグランド
車両重量:約2.1t
上記の状況でジャッキアップした際、いつもより上がりにくいと感じていました。
違和感があったものの急いでいたこともあり、何度も何度もレバーを上下させてやっと上がった状況でした。
上がったから良いだろうと思い込んでいましたが、少しするとジャッキからオイルが噴き出ててしまいました。
結果、ジャッキが壊れて上がらなくなってしまいました。
これは完全に私のミスでジャッキを壊してしまったのですが、皆さんは同じようなミスをしてもらいたくないので、必ず「車両重量 < ジャッキ耐荷重」になるものを選んでください。
例えばこのエルグランドの場合でしたら最低でも2.5t以上の耐荷重が必要です。
(私ならよりジャッキへの負担が少ない3tを選びます)
このように先ほど確認した車両重量より、どの程度の耐荷重が必要なのかを判断します。
ジャッキの最低位
最低位はジャッキを一番まで下げた状態のジャッキの高さ(青矢印)ですね。
最低位が低ければ車高の低い車にも対応する事が出来ます。
また、ローダウン車用に低く設計されたものもあります。
つまり「ジャッキの最低位 < 自分の車の最低地上高」の状態なら、基本的にはスロープに乗り上げなくても使用できます。
「基本的には」ってことは例外があるってこと?
あります。
注意したいのが上記イラストのジャッキ本体高さ(赤矢印)です。
ほとんどが、最低位(青矢印)は低いもののジャッキ本体(赤矢印)が高くなっています。
フロアジャッキでの1回のジャッキアップで左右のタイヤを浮かせる場合、ジャッキアップポイントが奥にジャッキを車両の下に潜り込ませる必要があります。
ジャッキ本体が大きい(赤矢印の長さが長い)場合、潜り込ませようとしたときにジャッキと車両が干渉して下記のようにジャッキアップ出来ないこともあります。
もし今持っているジャッキが入らない場合や、上記のように干渉する場合、
欲しいジャッキが「ジャッキの最低位 > 自分の車の最低地上高」の状態ならスロープも必要になります。
ジャッキの最高位
ジャッキを使って、車両を持ち上げられる高さのこと。
タイヤ交換のみであれば、あまり高さは必要ありませんが、車両の下に潜り込んで作業する場合には高く上がる方が作業効率も向上します。
しかし、自分の車がSUVやピックアップトラックの場合には最高位が400mm以上のジャッキでないとタイヤ交換ができるほど持ち上がらないこともあります。
最低地上高が高い車種は最高位も確認してください。
一般的な車種であれば、そこまで気にすることはありません。
ジャッキの材質や重量
材質にはいくつか種類がありそれぞれ特徴があります。
耐久性は高いが、本体重量が50kg近くのものもあり非常に重い。
大型サイズのジャッキに多い材質。
ガレージや倉庫などの平坦でキャスターを転がしやすい場所でジャッキアップすることが多い場合にはオススメです。
しかし、大人1人分ほどの重さになるので、持ち運び用にはできません。
耐久性は高くないが、本体重量が軽い。
中サイズに多い材質。
重量も30kg弱のものが多い印象で、めちゃくちゃ軽いわけではないものの1人で持てないほど重くもありません。
耐久性が高くないと表現しましたが、もちろんすぐ壊れるわけではありません。
あくまでスチール製と比較した場合、アルミ製の方が耐久性が高くないということです。
耐久性を高めるためにアルミとスチールのハイブリッドタイプのものもあります。
また、小サイズであれば、15kg未満のものが多いので片手で持てます。
おすすめのジャッキ 9選
マサダ シザースジャッキ MSJ-850
- 耐荷重:850kg(車両重量1,500kg以下)
- 最低位:121mm
- 最高位:381mm
- 本体重量:5.9Kg
大自工業 油圧フロアジャッキ
- 耐荷重:3t
- 最低位:約148mm
- 最高位:530mm
- 本体重量:約18Kg
- 耐荷重:2t
- 最低位:約85mm(付属サドル使用時:約115mm)
- 最高位:335mm(付属サドル使用時:約365mm)
- 本体重量:約11Kg
大橋産業 油圧式フロアジャッキ
- 耐荷重:3t
- 最低位:140mm
- 最高位:430mm
- 本体重量:約17.7Kg
- 耐荷重:2t
- 最低位:135mm
- 最高位:385mm
- 本体重量:10.2Kg
ARCAN(アルカン)
- 耐荷重:3t
- 最低位:101.6mm
- 最高位:470mm
- 本体重量:約26.4Kg
マサダ アルミジャッキ
- 耐荷重:2.0t
- 最低位:86mm
- 最高位:469mm
- 本体重量:20.4Kg
- 耐荷重:1.5t
- 最低位:79mm
- 最高位:379mm
- 本体重量:10.7Kg
ミナト ローダウンジャッキ 1.5t
- 耐荷重:1.5t
- 最低位:90mm
- 最高位:358mm(無負荷時)
- 本体重量:14.3Kg
ジャッキおすすめ9選と選び方!車のジャッキ3種類の特徴と耐荷重から選ぶのまとめ
解説した特徴やジャッキのスペックから選んでいただけるように解説しました。
おすすめとはいえズラズラっと並ぶと判断が難しいかもしれませんね。
特に迷われるのは種類と耐荷重ではないでしょうか。
簡単な目安を記載しますね。
種類
- とにかく安いのが良い:パンタグラフジャッキ
- 持ち運びに便利で楽に使いたい:シザースジャッキ
- 安全性は重視したいしコンパクトが良い:フロアジャッキ(2t以下)
- タイヤ交換以外にも専門的な作業など幅広く使う:フロアジャッキ(3t以上)
種類については解説したようにタイヤ交換しかやらない場合に大型のフロアジャッキはオーバースペックですね。
どのような用途で使用するか?という目線で選んでも良いですね。
耐荷重
- 1.5t:軽自動車~コンパクトカー
- 2t:コンパクトカー~ミニバン
- 3t:ミニバン、1BOX
上記はあくまでザックリとした目安です。
耐荷重が重い(大きい)ほど、大きな車種向けです。
軽自動車とコンパクトカーを2台所有されている方は重い方を基準に選んでくださいね。
例えば近いうちに軽自動車からコンパクトカーに今後乗り換える可能性がある場合には2t以上を選ぶと長く使用できます!
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