・逆ねじって何?
・普通のねじと何が違うの?
・どこに使われているの?
・どうやって見分けるの?
今回はこんな疑問に答えていきます。
一般的なねじである「右ねじ」と比較ながら「逆ねじ」を解説していきます。
過去に自動車整備をしていた中で「トラックのホイールナットが外れない!」という経験がありました。
その時に逆ねじについて調べましたので解説したいと思います。
間違った方向にねじを回すとねじが折れてしまう可能性があり、大変危険ですので参考になれば幸いです。
※下記に挙げるものは、私の経験や一例として挙げております。
例外もあり、全てに当てはまるとは限りませんのでご注意ください。
今回は右ねじと左ねじ(逆ねじ)の見分け方についての解説します。
その他のねじの種類や並目ねじと細目ねじの違いなどについては下記を参照ください。
逆ねじ(左ねじ)とは
右ねじは右回しで締まる
右ねじ(一般的なねじ)の締める方向は、右回し(時計回り)の方向に回転させることで締めることができます。
右ねじの緩める方向は逆回転の左回し(反時計周り)に回転させて緩めることができます。
ちなみに、右ねじのことを正ねじという言い方をすることもあります。
日常生活の右ねじ
日常生活の身近なものでは電球や水道の蛇口、ビンやペットボトルの蓋などが該当します。
(一部メーカーを除く)
逆ねじ(左ねじ)は左回しで締まる
右ねじと逆ねじ(左ねじ)ねじの違いは締める方向、緩める方向が違います。
反時計回り(左回し)に回すと締まり、時計回り(右回し)に回すと緩みます。
回転方向が逆になるので逆ねじとも呼ばれます。
締める方向が左なので左ねじとも呼ばれます。
逆ねじも左ねじも呼び方は違いますが、同じ意味です。
主に緩み防止目的で逆ねじが使われることが多いですね。
逆ねじの使用場所と理由
①バイク、自動車整備編
私が整備士をしていた中で経験したものをご紹介します。
1.逆ねじが使われているもの
・2t以上のトラックの左側(助手席側)ホイールナット
上記の部品を取り外すときに使用されていたことがあります。
2.逆ねじが使われている理由
・YAMAHA製のバイクの右側のミラー
衝突した時や、転倒した際に取付部分のねじやミラーの破損を防ぐため
例えば衝突や転倒したとき、ミラーに赤い矢印の方向に力が加わります。
ミラーと同じく赤丸内の取り付けボルトにも同じ方向(右回転)に力が加わります。
右ねじの場合だと締まる方向なので締まりすぎにより、取付ねじやミラー本体に無理な力が加わり、折れたり曲がったりしてしまう可能性があります。
そこで、逆ねじを使用すると右回転は緩む方向になります。
緩むことで無理に回転しようとする力を逃がすことができるので、ミラーの折れや曲がりを軽減させるために逆ねじを採用しています。
一方、左のミラーは、ぶつかった時に力がかかる方向は左回転で、右ねじの緩む方向なので逆ねじは使用する必要がありません。
・2t以上のトラックの左側(助手席側)ホイールナット
トラックのタイヤホイールを固定しているホイールナットは左側(助手席側)のみ逆ねじが使用されていることがあります。
なぜトラックは助手席側のみ逆ねじを使用する理由について、以下の3つに分けて解説します。
すべてのトラックが逆ねじではないのでご注意ください。
慣性の力が働き、緩む方向に回転しようとするのを防ぐため
進行方向に対して左側のタイヤは前進すると赤色の方向に回転します。
仮に走行中(回転中)に急ブレーキをかけたとします。
その場合、赤色の方向に回転する勢いのまま動き続けようとする慣性の力が働きます。
タイヤ・ホイールの回転は一気に停止しますが、ナットには慣性の力が働き、青色(反時計回り)の方向に回転しようとします。
もし、この状況で右ねじ(ナット)を使用していると緩んでしまう方向に力が加わってしまいます。
何度もブレーキをかける度に徐々に緩んでしまい最悪の場合、タイヤが外れてしまうため、
緩まないように逆ねじが使用されています。
ちなみに右側(運転席側)はタイヤ回転方向が逆になるので右ねじ(ナット)を使用しています。
タイヤの直径が大きく、車両重量も重いので、大きな力がかかるため
乗用車に比べトラックのタイヤの直径は何インチも大きく、車両重量も倍以上違う場合もあります。
タイヤの直径が大きいほど、車両重量が重いほど、慣性の力も大きくなるのでトラックやバスに逆ねじが使用されています。
(3)なぜ乗用車にも採用しないのか
理由は2つあります。
・部品共通化による生産コスト削減
・トラックやバスほど大きな力がかからない
安全性をトコトン高めるのであれば、逆ねじは乗用車にも採用すべきです。
しかし、右ねじを使い部品の共通化した方が製造工場の部品費用や組付作業の工数削減などの生産コストが下がります。
そして上記の(2)の通り、タイヤの直径が大きいほど、車両重量が重いほど、慣性の力も大きくなります。
乗用車とトラックを比較するとタイヤも大きくなければ、重量も重くないので発生する慣性の力も小さくなります。
②日常編
続いて日常生活の中でなるべく身近なものの中から左ねじが使われているものを挙げていきます。
1.逆ねじが使われているもの
私が一番身近だと感じるものは扇風機の羽を固定しているねじです。
分解して掃除をした時に目にした方もいらっしゃるのではないでしょうか?
その他のものでは、ラムネの瓶の蓋や自転車の左ペダル、草刈り機にも使われていることがあるかと思います。
もっとマニアックな左ねじの使用例で言えば拳銃やサバゲーで使用するサイレンサーも左ねじが使われているものがあります。
2.逆ねじが使われている理由
代表して扇風機を例に解説します。
理由は緩み防止で、上記①バイク、自動車編で解説した理由と同じく慣性の力が働くためです。
スイッチを入れたとき、モーターは一気に赤矢印の方向に回り始めます。
車の運転で例えるなら急発進したような状態です。
この時、動き出した回転に対して中心の白いキャップ(ねじ)にはそのまま停止し続けようとします。
停止し続けようとしたキャップには赤矢印とは反対の方向に回転する力が加わる場合と同じ状況になります。
もし、この部分に逆ねじが使われていないと緩む方向に力が加わり、何度も繰り返すことで扇風機の羽を固定しているねじが外れてしまいます。
外れてしまうと部品の破損やケガの原因になるので逆ねじが使用されています。
モーターの正回転方向は右回りと世界中の工業標準規格として定められています。
回転方向ではなく、取付ねじで脱落防止の対策をしています。
右ねじと左ねじを組み合わせることはある?
引用:モノタロウ
これまで右ねじと左ねじは正反対のものとして解説してきましたが、実は右ねじと左ねじを組み合わせて同時に使うこともあります。
代表的なのが、ロープやワイヤーなどの張力を調整しているターンバックルというもので、片側が右ねじ、もう片方が左ねじになっていてます。
主にマンションやアパート、フェンスや階段などの建設現場に使用されております。
なぜ右ねじと左ねじを組み合わせて使用しているの?
中心部分を回転させることで同時に締める(縮める)ことができるところにあります。
これにより単純に引っ張るよりも強い力で引くことができ、尚且つ張力を調整できるだけでなく、張力を保つことができる特徴があります。
右ねじと左ねじ(正ねじと逆ねじ)の見分け方
ねじ山が見える状態の見分け方
見分け方はねじ山の傾き方向を見ると判断できます。
青や赤の部分がねじ山だと思って見てください。
このように逆ねじは左肩上がり、右ねじは右肩上がりになっています。
自動車のホイールナットの見分け方
自動車、またはトラックのホイールナットが逆ねじなのか見分け方をご紹介します。
車種によって異なるのですが、ハブボルトに逆ねじ(左ねじ)を表す「L」の刻印がある場合があります。
ハブボルトが逆ねじであればナットも逆ねじのものが使用されていますので、ホイールナットの緩める方向は逆(左回転)です。
前述の通り、2t以上のトラックはタイヤ交換の際、助手席側は逆ねじかもしれないので注意してくださいね。
逆ねじではない場合(右ねじ)には「R」の刻印がある場合もあります。
タイヤホイールを車両に固定しているボルトのこと。
上記画像の赤丸の部分のボルトです。
ボルトやナットの種類については過去に解説しているのでこちらを参考にしてください。
ただし、すべてのねじに表記されていないので注意が必要です。
一番困るのが刻印もなく、固着している場合です。
その場合には分からないまま無理に右や左に回転させるのではなく整備情報やメーカー情報などを調べてください。
ナットにも逆ねじがある
前述の通り、ホイールナットのように通常のナットにも逆ねじがあります。
逆ねじのナットはホームセンターでも販売されていることもありますが、逆ねじのボルトに通常のナットは使用できないので目立つように「左ねじ用」「逆ねじ用」と大きく書かれていたり、赤文字で書かれていたりメーカーにより表記方法に違いがあります。
購入の際はサイズ間違いがないように確認して購入してくださいね。
右ねじと左ねじ(逆ねじ)の見分け方は?使用場所と理由・見分け方を2つ解説のまとめ
主に逆ねじは緩み防止や、簡単に緩められないようにするために使用されています。
あまり頻繁に目にしない逆ねじかと思いますが、知識として知っていると無理に力をかけてねじが折れたり、壊れてしまう可能性が減るのかと思いますので活用いただければと思います。
皆さんの参考になれば幸いです。
最後まで見ていただきありがとうございます!